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「日本の科学行政と分類学」

宮嶌 和男(日本学術振興会学術事業部長兼文部科学省研究振興局学術参与)

 この度は日本分類学会連合設立シンポジウムにお招きいただき有り難うございます.先生方の日頃の様々な御活動のお陰で,各方面の御理解が深まり,学術に関する予算も年々着々と伸び,私ども心より感謝致しております.文部科学省研究振興局および日本学術振興会では,先生方からの要望等に対して,いかにお手伝いできる仕組みを作るか,いかに仕事をし易くするかを考えつつ,制度の改善等に努めているところでございます.今回は,先生方の研究に直結した科学研究費補助金や,先生方に活用していただける日本学術振興会の種々の制度を中心にお話をしたいと考えております.

 非常に厳しい財政状況の中,本年度も1,703億円という非常に大きな科学研究費補助金の予算を計上することができました.これは,特殊法人改革や補助金の全体カットという中で,破格の扱いをいただいたと思っております.しかし,新規採択率は,未だ2割程度であり,充足率もようやく78%になったという状況です.科研費に申請できる資格をもった方は全国に17万人ほどいらっしゃいますが,実際の申請件数を見ますと11万3千件となっております.この中には特定領域研究や基盤研究等で重複申請している方も含まれていますので,実際に申請いただいている方は8万人くらいでしょうか.

 ご存知の通り,科研費というのは申請があった分野に研究費が配分されるということになっております.一例ですが,科研費の分野別への配分を見てみますと,現在,理工系は全体の35.4%,生物系が約半分近くを占めております.20年前は,理工系が40%以上を占めていたわけですが,生物学分野の研究進展とともに生物系への申請件数が増え,現在では生物系が理工系をしのぐようになっています.

 科研費制度に関しましては,先生方からの御要望を聞き,制度改革に努力を重ねているところです.例えば,今まで人にかかる経費が出せないということに対して,非常に強い御要望がありましたが,平成13年度から研究支援職員という形で,PDあるいは大学院生を雇用することが可能となりました.また,今年度から間接経費を導入し,大学の御判断で例えば科研費事務のための臨時雇用などへの使途を可能にし,より弾力的な経費執行ができるようになってきております.

 また,研究者の方々に継続的・安定的に研究費を交付するため,研究期間が4年以上の特別推進研究または基盤研究の研究課題については最終年度の前年度においても申請可能としました.

 科研費の分科細目,審査制度全般に関しましても見直しを進めています.分科細目表をこれまでの8部(文学,法学,経済学,理学,工学,農学,医学,複合領域)構成から,4系(総合・新領域系,人文系,理工系,生物系)構成とし,これまでの複合領域は名称を総合・新領域系として大幅な内容の見直しを行いました.また,総合・新領域系の細目でのキーワードグループ審査(細目をキーワードにより複数のグループに分け,第1段審査をそのキーワードのグループ単位で実施する方式)の導入に併せて,他の3系についてもキーワードを全細目で付し,将来キーワードを活用して審査を行うことを念頭に置いて見直しを行っています.

 科研費の中には,学術定期刊行物,学術図書の出版の援助を行ったり,学会が,青少年や一般の方々への学術研究に関する啓蒙活動を援助する費目(研究成果公開促進費)があり,これらも目的に応じて御活用いただきたいと思っております.

 学術振興会には,ご存知のように特別研究員という制度があり,DCで月額20万円程度,PDで月額40万円弱援助しております.採用人数も着実に増えてきております.この制度も科研費同様,申請に応じて採用されますので,先生方から若手研究者の方々へのアピール,御指導を御願いしたいと存じます.また,若手研究者の方に2年間海外でフィールド調査等の研究活動をしていただける海外特別研究員という制度もあり,毎年100人程度を海外に送り出しております.

 また,外国人特別研究員という制度によって,国内外の外国人研究者を招聘することが可能です.これを有効に使っていただいて,分類学および関連分野の研究の発展,後継者の養成,活性化等に御活用いただければと思います.

 日本学術振興会の様々な制度に目配りをいただき,日本分類学会連合の活動にお役立ていただければと思います.また,いろいろな機会に御指導いただきたいと思っておりますので,宜しく御願いいたします.